Dec 25, 2010

Season's Greetings

「笑顔で、鼻歌まじりくらいの気持ちで歩んでいく・・・」

今年、撮影をとおして出会ったイニュッホイ(グリーンランドのポーラー・エスキモー)の腕利きの猟師から学んだことだった。

「今まで大きな獲物を逃して悔しい思いをしたことはあるか?」

ある日、彼にそんな質問をしたことがあった。
その問いに対して、彼はしばらく腕組みをして真剣に考えたあと「そんなことは感じたことも、思ったこともない。そもそも獲物なんてものは、獲れて儲けものだ」と答えたのだった。その時、なんて愚かな質問をしたことかと後悔したものだった。狩猟とは天候や運など様々な要因が複雑にからみ合い、個人の技術や努力だけで報われるものではないのだ。そして、何と言う謙虚さ、潔さか・・・。やはり、環境は人も育むのだと再認識したのだった。

そして、そんな彼の日常には笑顔や鼻歌が絶えなかった。極地の厳しい風雪に晒されてきた彼の精神は、鋼のように冷徹で強固なのではなく、ツンドラの荒野に生える新緑を湛えたしなやかなヤナギのようだった。
(写真はアッパリアス『ヒメウミスズメ』の群)