スライドボックスの中から懐かしい写真が出てきた。1991年か92年頃に撮影したアラスカ内陸部の夕陽。大学の夏休み中、ビーバーの生態写真を撮っていた時に写したものだ。砂嵐が激しい日で、燃えるような夕焼けが印象的だった。
この頃は、自分が本格的にモノクロームで写真を撮っていくなんて、まして人物を写そうなんてことは想像もしていなかった(写真家になることも具体的には・・)。モノクロ写真など、どこか古臭く感じていて嫌なくらいだった。
「人生何が起きるかわからない」と言う以前に、自分自身がどう変わってゆくかさえわからないものだ。”怒れるベーシスト” チャールズ・ミンガスは「常に変化する自分というものが、最も謎に満ちている」と言ったが、確かに一番わからないモノのひとつが、一番身近なはずの自分自身なのかもしれない。
写真家を志してから撮影をとおして様々な人たちと出会って色々な経験をして、ついでにずいぶん道草も食ってきたが、あのとき見た夕陽を思い出すと、不思議なくらいに鮮明な記憶として甦ってくる。人間はどれだけ変化・成長しても、やっぱり自分にとって原点となる光景や経験があり、その根っこの部分から伸びてゆくものなのだろう・・・なんて今の自分が考えるには年寄り臭い感じがするので、今は次へのステップを考えよう。