橇のランナーの手入れをする大島育雄さん。近くで若者も同じことをしていたら、歩み寄って教えていた。「シオラパルクに来たばかりで右も左も分からなかった頃、皆が色々と教えてくれた。今度は自分がその恩返しをする番なんだ」と笑って話していた。
昔は氷点下40度を下回るような極寒では摩擦が高まるので、滑りを良くするためにランナーに泥炭を盛ってから、その表面に氷のコーティングを施していた。クヌート・ラスムッセンは長期遠征の際には泥炭の代替に水で溶いた小麦粉を使い、気温が上昇するとはがして犬のエサにした。カナダのイヌイットが泥炭をランナーに盛る様子が、第5次チューレ探検の記録映画のなかでも少しだけ紹介されている(16分48秒あたりから)。カナダ東部からアラスカまで、重い荷物を積んだ犬橇で3年間にわたり遠征調査したラスムッセンにとって、この手法無くして旅は続けられなかったと言っても過言でないほどで、著書のなかで幾度となく氷のコーティング(アイス・シューイング)について言及している。