「言葉で掛けた魔法を言葉で解くことはできない。だから音楽や絵画や写真が必要とされる」なんて言おうものなら、小説家あたりに目を吊り上げて怒られそうだし、「それは思考停止状態だ!」なんて糾弾されもしそうだ。
しかし、言葉を使ってしまうと、一向に知りえなく、そのまま一番肝心で大切なことを取りの逃がすことがある。何かの光景を目の当たりにして当惑したり、感動したり・・その気持ちをなんとか言葉にしたときには、もう本来受けた衝撃や感動したことから遠のいたりしている(そのために、小説家は行間からナニゴトかを立ち上がらせたり伝えたり努力するのだろう)。
このほんらい混沌とした世界を認識するために、人間は言葉を使う。これまで混沌に無数の区切り目を入れて「世界」を構築してきたし、この今も、しつづけている。「人間は言葉の生き物」といわれるのもその所以だが、ならば、区切り目を入れるごとに、区切り目と区切り目のはざま(混沌、闇)はさらに増えていくはずでもある。人間はそのことに恐れや不安を感じ、もうどうにも行き詰まってしまったときには、とうとうその言葉を「解体」したりもする。結局それは、「言葉」どころか「自分自身」を解体していることではないかとも思えるのだが、物事を知れば知るほど、混沌(謎)が深まってゆくという深遠さを物語っているかのようでもある(世界の謎が深まるというよりも、自分自身の謎が深まってゆくと言うべきか?M. ハイデッガーの言った、「存在は了解のうちにある」とか「現存在(人間)が存在するかぎりでのみ、存在はある」という言葉が思い起こされる)。
「世界」というものの認識の仕方自体、人間の言葉のうえに成り立っているともいえる・・ということは、言語が違ってしまえば、世界観も変わるということでもある。文化によって考え方や価値観が違うのも当然だろう。文化の「核」は言葉なのだから。
だとすれば、常に「速度」が求められる(強いられる)現代で、言語とか世界観というものはどのように変化しているのだろうか?テクノロジーというものは、蓄積された知識や技術が多くなればなるほど、その発展の度合いは一層加速してゆくというが、言語の変化の加速度もやはり増しているのだろうか?
はやり廃れが激しい今の世の中で、「ひとつの言語が消える」などということを日常的に考える人はあまりいないと思う(そんな余裕もないだろうが)。しかし、言語学的には、言葉というものは放っておいても、おおよそ1000年ぐらいで相互理解ができないくらいに自然と変化すると考えられている(同化政策のように、強制的にその言語の使用を禁止しない場合)。
以前出版した写真集「sila」(イヌイット語で「世界」の意)で、アリュート、ユピック、イヌイットの親子三世代の家族のポートレートを含め、三つの言語(西グリーンランド語(アリュート・エスキモー語族を代表して)、日本語、英語)で表記したのは、エスキモーの文化に対して敬意を表するのが第一義でもあるのだが、(たった半世紀の)同化政策の結果「今世紀中にほとんどの地域でイヌイット語を話せる世代が途絶える」という事実、この世から、ひとつの「世界」が消える、という思いにも根付いている。
May 15, 2014
Jan 1, 2014
Dec 9, 2013
Nov 26, 2013
Printing the Bien Book in Verona, Italy March, 2013
ここ数年、大好きなオーデュボンの画集が高品質・高精度の印刷で出版されている。ハーバード大出版部からも原画の画集が出ていた。これは今年に出版された画集の印刷風景。だいぶ値が張る画集だが、やっぱり欲しいなあ(数年前に買った画集は$800まで値上がっている!)。
Nov 5, 2013
「長野県生まれの写真家たち」トークイベント
長野市の北野美術館別館で開催中の「長野県生まれの写真家たち」にて、先週末、由良環さんのトークが開催されました。由良さんは 4x5 インチカメラで世界の都市を定点撮影し、モノクロームプリントを制作されている方。今年の日本写真協会賞新人賞を受賞されました。
12月1日までの開催期間中、参加作家によるトークイベントが予定されています。
Oct 29, 2013
「長野県生まれの写真家たち」作品展
長野県長野市にある北野美術館別館 北野カルチュラルセンターにて開催される写真展「長野県出身の写真家たち」に、作品を出展します。
北野カルチュラルセンター(北野美術館分館)では、10周年記念展として長野県生まれの写真家たちに焦点を当てた「長野県生まれの写真家たち」代表作品展を開催します。
今回の出品者は計22名、一人3点 / 全作品66点が一堂に展示されます。
この中には、「日本写真協会賞作家賞受賞者=3名」「同賞新人賞受賞者=7名」「ニコン伊奈信男賞受賞者=3名」「ジャーナリスト賞関係受賞者=3名」も含まれております。
また、物故者として飯田市出身の藤本四八(日本写真家協会会長)をはじめ、阿智村出身の熊谷元一、米国で活躍したハリー・K・シゲタ、松代町出身の島田謹介等の作品も展示します。
北野カルチュラルセンターでの展示は10月30日(水)から12月1日(日)まで。
この写真展は、東京都新宿区四谷のポートレートギャラリーでも、2014年1月30日(木)から2月6日まで開催予定です。
Oct 17, 2013
写真集「sila」サイン・エディションなし
この一冊が流出した理由は よほど飲み代の足しが欲しかったのか? 謎ですが、「サイン・エディションなし」は私にとっても貴重なので、余裕ができたら買おうかなぁ。
Subscribe to:
Posts (Atom)