「夢か現か(ユメカウツツカ)」などと言うが、古代エジプトでは夢がほんとうの世界だと考えられていたと、どこかで聞いた覚えがある。
なにが「ほんとう」とか「真実」とか、実証することなどそもそも不可能だが(理論的には)、「夢」とか「現実」という、いま自分がどちらの世界にあるのかという問いも、実はとても難しい問題のようだ。
ただ現実の世界においては、一見動かし難く思える秩序をも疑うことができ、必要とあらばそれを確認できる可能性が秘められている。そして「生きる」ということは、そのために命を使うということに繋がっていると思う。
長年写真に取り組んでいると「夢を追い続ける人」などと言われることがある。当然この場合の「夢」は「願い」のことであろうが、いつもこの言葉が孕むナイーブな響きに違和感を感じてしまう。何故なら、創作とは身体を張って真っ正面から現実世界に向かい合い、森羅万象の一片でもしっかりと見極めることでもあるから。
「夢に生きる、夢追い人」のような生き方もどこかにあろうが、現実世界のもうひとつの「現実」は、命にはタイムリミットがあるということだ。